【読書感想文】となりの億万長者

時代を超えた本質

となりの億万長者 – トマス・J・スタンリー (著), ウィリアム・D・ダンコ (著)

1997年に出版されながら、20年以上にわたり読み継がれている名著です。
「金持ちとはどんな人のことを指すのか?」という問いに対し、アメリカの高所得者(年収15万ドル以上)へのインタビューを通じて、本当の資産家像を描き出しています。

本当の資産家の意外な姿

本当の資産家は、一般的なイメージとは異なり、見栄のためにお金を使いません。
高級住宅街には住まず、実用的な車に乗り、高価な時計やスーツも身につけない。
子供にも必要以上の小遣いを与えないのです。

つまり、外見からは決して裕福には見えない「普通の人」こそが、実は着実に資産を築いている人が多いのです。
彼らは余剰資金を消費ではなく、投資に回し、更に長期的な資産を形成しています。

この原則を体現する最も有名な例が、世界有数の投資家ウォーレン・バフェットでしょう。
彼は1,300億ドル(約20兆円)以上の資産を持ちながら、1958年に3万ドルで購入した質素な家に住み続けています。現在の価値に換算しても、彼の莫大な資産からすれば驚くほど控えめな住まいです。

こうした資産家は決まって「お金があるのにそんな質素な生活で幸せなんですか?」と問われるそうですが、「もちろん幸せですよ」と胸を張ります。

“彼らは、お金の心配をしないで済むことのほうが、世間体を取り繕うよりもずっと大切だと考えている”

この哲学によって、もし仕事を失うことがあっても10年以上は余裕をもって生活ができるのだというのです。

マスメディアの歪んだ焦点

本書が指摘するように、メディアは「消費する成功者」像を好んで取り上げます。
アスリートや芸能人のような高収入かつ派手な生活をしている人々が称賛される一方、質素に暮らしながら着実に資産を築く人々は注目されません。
「派手に消費をすることが成功者である」という風潮によって、年収15万ドル以上を稼ぎながら長期的な資産を築くことができない人も少なくないようです。

日本の老後2,000万円問題の本質

この本を読んでいた頃、日本では「老後2,000万円問題」が話題になっていました。
多くの議論が年金制度に向けられる中、本書の内容に照らすと、実は個人の消費習慣と資産形成の姿勢こそが重要だということが見えてきます。
私自身も個人事業主としてこの本の教えである「無駄な見栄を張らない」「余剰資金は投資に回す」という原則を心がけています。

私は2018年から株式投資を始め、ほどなくしてコロナショックの暴落を経験しながらも、当時はサラリーマンであったため毎月決まった額を積立投資していました。

暴落を乗り越えたことでパフォーマンスが良くなり、この長期的な投資は、行政書士として独立した当初の資金面を支えてくれました。
こうした自身の経験からも、1997年に出版されたこの本の時代を超えた本質を実感しています。

物質的な豊かさを追い求める前に、まずは財務的な安心を確保する、この単純ながらも本質的な考えは、個人でも組織でも、長期的な成功のヒントとなるでしょう。

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