お金に余裕があっても銀行から融資を受けるべき?(2026年4月12日更新)

目次

はじめに

これから事業を始めようというときや、開業して間もない頃、資金のやり繰りで悩む方は少なくありません。しかし、その時点ではまだ「この人はきちんとお金を返してくれる」という実績や信用がないため、いわゆる大手銀行などから融資を受けることはとても難しいのが現実です。

その一方で、国が100%出資している「日本政策金融公庫(以下、公庫)」は、そうした実績のないスタートアップの事業者様にも積極的に融資を行ってくれる心強い味方です。

とは言え、銀行からお金を借りる以上は、利息をつけて返さなければなりません。「借金はするべきじゃない」「自分の手持ちの資金だけでやるべきだ」という考え方も、ひとつの信念として尊重されるべきものです。

ただ、色々なお客様とお話しをする中で、特に個人事業主の方の多くが「借金(負債)=悪いこと」というイメージを強くお持ちであることに気づかされます。その感覚を否定するつもりはまったくありません。
ただ、私自身の体験として、開業した頃に融資で買ったノートパソコンは当時6万円でしたが、今同じくらいの性能のものを買おうとすると10万円を超えてしまいます。つまり、多少の利息を払ってでも、早く手に入れておいたほうが結果的にお得だった、ということもあるのです。

「自分はまだ資金に余裕があるから、借りなくても大丈夫」とお考えの方にこそ、私は以下の5つの理由から「余裕があるうちに借りておくこと」をおすすめしています。

1.創業時と事業開始後では融資基準が異なる

会社での「新卒採用」と「中途採用」を思い浮かべてみてください。新卒の場合は「これからのポテンシャル(可能性)」で評価されますが、中途の場合は「これまでの実績」で評価されると思います。

融資も同様に、創業のタイミングでは「これからの事業計画」が評価の基準になりますが、すでに事業を始めている場合は「実際の売上や利益」でシビアに判断されます。事業計画であれば、私たち専門家と一緒にしっかりと練り上げることができますが、すでに出ている売上の数字はごまかしがききません。

また、融資を受けるためには「ある程度の自己資金」を持っていることも条件になります。「いざお金が足りなくなってピンチ!」という状況になってからでは、その時点での資金不足が理由で融資を断られてしまう可能性が高いのです。

2.創業時の有利な制度を利用できる

公庫には、「新しく事業を始める方」や「開業して間もない方(税務申告を2期終えていない方)」だけが使える「新規開業・スタートアップ支援資金」という特別な制度があります。

2024年4月より、旧「新創業融資制度」が統合・拡充され「新規開業・スタートアップ支援資金」として生まれ変わりました。融資限度額が最大7,200万円(旧3,000万円)に引き上げられ、据置期間も最長5年(旧2年)に延長しました。より有利な条件での融資申込みが可能になっています(事業のために払った利息は経費にできるため、税金を抑える効果もあります)。

最近は世の中の金利が上がる傾向にありますが、公庫は国の機関として安定した固定金利での融資を続けてくれています。「世の中の金利が上がっている今だからこそ」、公庫の低い固定金利の価値はますます高まっていると言えます。 一般的なカードローンやリボ払い(年利10〜18%ほど)と比べると、その低さは圧倒的です。

3.融資実行までの時間を考慮する必要がある

一般的には融資の申込から入金までは以下のようなプロセスで進んでいきます。
融資申込 → 事業計画書などの資料提出 → 銀行との面談 → (融資決定の場合)追加書類の提出 → 入金

融資の申し込みをしてから、実際にお金が振り込まれるまでには、早くても1ヶ月半ほどかかります。場合によっては何度か公庫の支店まで足を運ぶ必要も出てきます。「いざピンチになってから」では、時間がかかりすぎて間に合わない恐れがあるのです。

また、先ほどのパソコンの例のように、物価が上がり続けている今、設備を買うのを先送りにすることは、そのまま「コストが増える」ことにつながってしまいます。

「いざとなれば買える」が「気づけば価格が上がって買いにくくなっていた」という状況は、開業後のクライアントから実際によく聞く話です。

4.「借りて返す」という実績が、次の大きなステップにつながる

クレジットカードを毎月きちんと支払っていると、だんだん使える限度額が増えていきます。銀行もそれと同じで、「借りたお金を毎月期日どおりに返す」ことで、金融機関からの信用が高まっていきます。そして、ある程度返し終わった頃に、今度はもっと大きな金額の融資を受けやすくなるのです。

まずは審査に通りやすい公庫で融資を受け、その実績や作った計画書をもとにして、今度は地元の信用金庫などから融資を受ける、という流れもとても有効です。

5.何よりも「精神的な安心感」がある

もちろん、借りたお金はいつか返さなければなりませんが、事業の運転資金は最長で10年という長い期間をかけて返すことができます。 開業してすぐの1〜2年は、どうしてもお金のやり繰りが厳しくなりがちです。そんな時期に、口座にまとまった現金があることは、精神的にものすごく大きな安心感をもたらしてくれます。

無駄遣いは避けるべきですが、事業を育てるために必要な最初の投資は、惜しむべきではありません。
計画的にお金を使える方にとって、この安心感はとても大きな力になります。

銀行からお金を借りないほうが良いケースは?

一方で、あえて融資を受けないほうがいいケースもあります。

1. 返済の計画がまったく立てられない場合

専門家のアドバイスを受けても、「どうやって返していくか」のイメージがまったく湧かない場合は、期日どおりの返済が難しくなるため、おすすめできません。また、「口座に大金が入ると、つい気が大きくなって無駄遣いしてしまいそう」という方も、あとで苦しくなってしまうリスクがあります。

2. 手持ちの資金が「数年分」など、ものすごく潤沢にある場合

「この先何年かはまったく売上がなくてもやっていける」というくらい、ご自身の資金が潤沢にある場合は、あえて今すぐ融資を受ける必要は薄いかもしれません。ただし、「今は余裕がある」が「ずっと余裕がある」とは限りません。特別な優遇制度が使えるのは最初のうちだけですので、その点はご留意ください。

融資で実現できたこと

実は私も、開業したときは「自分の資金だけでやっていけるんじゃないか」と思っていました。しかし、いろいろと検討した結果、開業の2ヶ月後に公庫から融資を受け、そのあとに地元の信用金庫からも融資を受けました。

計画書を作る過程で銀行の担当者さんからプロの目線でアドバイスをもらえましたし、何より「銀行とのつながりを持てた」ことは大きなプラスでした。また、行政書士という仕事柄、自分で計画書を作り、書類をそろえて提出したという実務の経験自体が、今のサポート業務にとても役立っています。

また、当時の公庫の担当者さんから「行政書士のお仕事だけでなく、音楽活動も同じくらいの優先度で進めていくべきですよ」とアドバイスをいただき、その言葉にとても背中を押されたことを覚えています。

先日、改めて日本政策金融公庫の融資課長と面談する機会があり、公庫が力を入れている分野について伺いました。ソーシャルビジネスや地域のスタートアップ、さらには非営利団体への融資も積極的に行っているとのことでした。利益だけでなく、その事業の支援者やファンの存在、地域社会への貢献度も評価するという姿勢に、金融機関も創業者や地域事業者を本気で応援していることを実感しました。

それぞれの信念を尊重しつつ

「借金は絶対にしたくない」「自己資金だけでやりたい」という考え方は、一つの信念として尊重されるべきものです。実際、借入をせずに堅実に事業を運営されている方も多くいらっしゃいます。

ただ、創業融資の低い金利や有利な条件は、まさに創業者を応援するために国が用意した制度です。金利が上がっている今の時代に、「借金は悪いことだから」というイメージだけで利用しないのは、少しもったいないのではないかと思います。

それぞれの事業者様によって状況やお考えは違いますが、「いざという時の選択肢として知っておく」ことには必ず価値があります。融資を受けるか受けないかは最終的にご自身の判断ですが、知らないまま機会を逃すのは避けたいところです。

クリエイターや個人事業主のみなさまに、こうした資金調達の選択肢があることを知っていただき、ご自身に一番合った形で事業を発展させていただければと思います。

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