著作者人格権とは

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著作者人格権

著作「物」を保護するものが著作権とすると、その著作「者」(人格や名誉)を保護するものが著作者人格権です。
著作権と同様に非常に重要な制度ですが、一般的には著作権しか認知されていないことが多いため、基本的な制度を知ることは重要だと言えます。

著作者人格権(具体的な権利)

著作者人格権は、以下の3つの権利からなります。

公表権(著作権法18条)

著作物の公表の有無、公表する場合の条件を定めことができる権利

氏名表示権(著作権法19条)

著作物に著作者名を付けるかどうか。付ける場合は、本名(実名)か変名(ペンネーム等)かを決めることのできる権利

同一性保持権(著作権法20条)

著作物の題名や内容を第三者が勝手に改変できない権利

著作権と著作者人格権の違い

著作物は有償・無償を問わず、他人へ譲渡することが出来、著作権自体も譲渡することができます。
(著作物を譲渡しただけでは当然に著作権も移転する訳ではないことに注意してください。)

一方で、著作者人格権はその著作者の人格を規定するものなので、譲渡したり、相続の対象とすることはできません。

一つ例を挙げると、画家のAさんが描いた絵を友人のBさんに譲渡しました。
この時、以下のようなパターンになります。

Aさんの絵画の所有権がBさんに移っても当然に著作権は移転しません。
この場合、Aさんが引き続き絵画の著作権を保持しますので、著作権ごと譲渡するには、別途そのような契約を結ぶ必要があります。

また、著作者人格権を譲渡することはできませんので、絵画の所有権・著作権がBさんに移転した後でも、Aさんは著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)を行使することができます。
よって、Aさんが制作したという事実は変わりませんし、Bさんは自分に著作権があったとしてもその絵画を勝手に改変したり、最初からBさんが描いたかのように扱ったり発表したりすることはできません。

著作者人格権は譲渡や相続をすることができないため、著作者の死亡によって消滅しますが、原則として著作者の死後であっても、著作者が生きていたなら著作者人格権の侵害となるような行為をしてはいけないと著作権法は定めています。

著作者人格権の不行使

上記で著作人格権は譲渡することができないと書きましたが、例えば著名な人物(政治家やアイドルなど)が自書を出版する際は、自分自身で書くのではなくインタビューなどに沿ってゴーストライターが執筆するというのは今日において特別なことではありません。
しかし、後になって「実はあの本は自分が書いたのだ」と発表されるとややこしいことになってしまいます。

こういった際には「著作者人格権の不行使」を契約書に特約として記載し、双方の合意の上で著作物の譲渡・使用することになります。

著作者人格権の不行使を交わしたからと言って無条件に著作物を扱っても良いという訳ではなく、オリジナルの著作者の名誉は可能な限り守るという配慮が必要となります。

自分の作品をコンテストに応募する際の規約など

自分の作品をコンテストに応募する際には、コンテストの運営団体が定めた規約に同意した上で応募することになりますが、作品がどのように扱われるかについては慎重に規約を読む必要があります。

作品の著作権は応募者に帰属するのか、それともコンテスト運営側に譲渡する扱いとなるのか。
著作者人格権の不行使の文言はあるのか、などです。

これは著作物に関する契約書を交わす際にも重要な点となります。

トラブルや損害賠償について

損害賠償については民法709条の不法行為に基づくことになります。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 e-gov 法令検索 民法 第五章 不法行為

ここで重要なのは、「著作権(著作物)を譲渡する」という契約を結んだとしても、それに対して支払われる金額はあくまでも著作権(著作物)に対してであり、特段の理由もなく著作者の名前を表示しなかったり、著作物を無断で改変することによって著作者人格権の侵害が認められたときは、著作者による損害賠償の請求の余地が発生するということになります。

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