著作権と著作物
「著作権」として保護される「著作物」とは何かを確認してみましょう。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
引用: e-Gov法令検索 著作権法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
例えば「5歳の子供が描いたお母さんの似顔絵」は思想又は感情を創作的に表現したもので美術の範囲に属すると言えるので著作物として認められます。
絵が上手か、商品的な価値があるかという要素はここでは全く関係がなく、著作者が未成年か成年かという区別もありません。
著作物として認められるものは何も申請をせずとも当然に本人に権利が帰属します(無方式主義と言います)。
また、著作物は財産権の一種のため、他人に譲り渡すこともできます。
著作権等の登録制度
その一方で文化庁に対して著作権登録制度というものがあり、著作権者の公示(公に知らしめること)のメリットがあります。
どのような効力を持つのか、例を紹介します。
Aさんは自分で作曲した音楽(著作物)をBさんに譲渡する契約を結んだが、同じ著作物をCさんにも譲渡する契約を後から結んでいた。
Bさんはそのことを知らなかったが、CさんがBさんに対して「この楽曲は私に譲渡したものだ」と主張してきた。
Bさんはその楽曲が自分に譲渡されていることをCさんに主張できるか?
→ 著作権の移転の登録を行っていれば、BさんはCさんにそのことを主張できる。
(著作権の登録)
第七十七条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 著作権の移転若しくは信託による変更又は処分の制限
二 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
引用: e-Gov法令検索 著作権法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
「対抗」とは、相手に対して主張ができるという意味です。
移転の登録をしなければ対抗することはできませんので、上記の例ではAさんとBさんが先に契約を結んだとしても、後から契約を結んだCさんが先に移転の登録を行った場合は、BさんはCさんに対して楽曲が譲渡されたことを主張できなくなります。
いわゆる民法177条でいう不動産の登記が第三者に対しての対抗要件を持つということと考え方は同じと言えます(Bさんから見てCさんが第三者になる)。
ちなみに、不動産登記は司法書士の独占業務ですが、文化庁への著作権登録等の代理申請は行政書士の独占業務であり、当事務所でも申請を請負っております。
しかし、前述したように著作権そのものは文化庁への申請も必要なく、著作物が生まれた時に当然に発生するということに注意してください。
関連サイト
AIと著作権
巷を賑わせているAIですが、AIが生み出した絵、文章、プログラムなどは「思想・感情がない」ため、どれだけ高度なものであっても (今のところ) 著作物として認められません。
ではそのAIが生み出した著作物を人間が流用(改良)して使ったらどうなるのか、など色々なケースがまだ法律として明確に規定されていないため、様々なところで議論が交わされていますが、まずベースとなる知識として現行の著作権法を知っておくことは重要であると思います。