著作権の譲渡と、その注意点

目次

著作権の譲渡


下記の記事で、主に以下の点について解説しました。

・自分の生み出した著作物や著作権は他人に譲渡することができる
・著作物を譲渡しても当然に著作権も譲渡されるわけではない
・著作者人格権は他人に譲渡することができない

今回は、著作権の譲渡について更に解説をしたいと思います。

著作権の譲渡についての著作権法の条文

(著作権の譲渡)
第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

引用: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048#Mp-Ch_2-Se_6-At_61

2項について、ぱっと見では分かりづらい文言だと思います。
また、「第二十七条又は第二十八条に規定する権利」と記述がありますので、著作権法の27条および28条も併せて確認しましょう。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

引用: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048#Mp-Ch_2-Se_3-Ss_3-At_27

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

引用: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048#Mp-Ch_2-Se_3-Ss_3-At_28

27条の規定は、著作者は、その著作物にアレンジを加えることによって別の作品(例えば映画化やリメイク)を作る権利(翻案権)を持っています。

28条の規定は、例えばある小説を元に漫画の制作をしたいと考えたとき、漫画は小説の二次的著作物となり、原則として原作の小説を書いた人の許諾を得て制作をすることになります。
そしてその漫画を元にアニメーション映画を制作しようとするとき、映画制作者は漫画の制作者だけでなく小説の執筆者(原作者)にも許諾を得る必要があります。

61条2項に規定されているのは、著作権を他の人に譲るときに、例え「すべての著作権を譲渡する」という取り決めをしたとしても、「翻案権や二次的著作物の利用権も一緒に譲ります」ということが契約書等に明記されていない場合、これらの権利は譲渡されず、もとの著作者が持ち続けると考えますよ、ということになります。

なお、契約書には以下のような文言として記載されることが一般的です。
「著作物に関する一切の著作権(著作権法27条及び28条の権利を含む。)を譲渡する。」

著作権法61条2項の意図

著作者人格権に含まれる「同一性保持権(20条)」は、著作物及びその題号(タイトル)について、著作者の意に反して変更や改変を禁止できる権利のことをいいます。
そして著作者人格権は他人に譲渡することができないため、著作権自体を譲渡していてもこの権利は著作者に帰属します。

この規定があるにも関わらず、わざわざ61条2項で別途、翻案権等の譲渡の規定が定められているのは、やはりそれだけ著作権を譲渡するにあたってのトラブルが多かったからではないかと思われます。

過去の紛争事例

全国的に有名なキャラクターに、彦根市の「ひこにゃん」がいます。
ひこにゃんに関しては、実は同一性保持権や翻案権をめぐって、原作者と彦根市の間で10年間にわたる紛争がありました(最終的には和解)。
紛争に関する経緯については、下記のサイト(公益社団法人日本複製権センター(JRRC)で詳しく解説されています。

 「ひこにゃん」の問題を考えたときに、紛争が生じた原因は、著作者と彦根市側の原画の取扱いに関する話し合いが十分でなかったことと著作権制度に関する知識の欠如による契約の不備と考えます。最初にそのことをきちんとしておけば、訴訟になるような紛争も起こらなかったでしょうし、積極的な事業展開により、彦根の知名度もより高まり、ライセンス料もさらに増加したと考えられます。

引用:RRCマガジンNo.371 ご当地キャラクター「ひこにゃん」と契約の不備 https://jrrc.or.jp/no371/ 

通常、著作権を譲り受けたい側は、それを何らかのビジネスに二次的に利用したいと考えることが多いでしょう。
しかし、著作者(原作者)の立場からすれば、二次的な利用自体は許容できても、自分が創り出した作品に勝手に設定を付け加えられたり、改変されたりすることで、それが公式の設定となってしまうことは許せないと感じるのが当然です。

そして、こういったケースの場合、著作権の譲渡を受ける側(クライアント)は企業や公共団体など規模の大きい組織であることが多く、著作権を譲渡する側は個人事業主のデザイナーなどが主体になることがあるため、パワーバランスに差が出てきてしまいます。

この差を是正するため(立場的に弱い方を保護するため)に、著作権法の規定が設けられていると考えられます。
しかし、裁判が起きるほどの紛争にまで発展してしまうと、その解決にはかなりの時間が掛かってしまいます。

おわりに

著作権を譲り受けさえすれば、その著作物は自由に使用してよい訳ではない」ということをまずは押さえておきましょう。

譲渡された著作権で二次的なビジネスを行いたい場合は、どういう利用目的で、どの部分を使用または改変する可能性があるのかについて、譲渡する側とされる側でしっかりと話し合うこと、そして合意した内容について書面に残しておくことが重要です。

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