はじめに
行政書士として地域の皆様のお手伝いをさせていただく中で、日頃から感じていることがあります。それは、「本当の意味で多様性を受け入れる社会」の実現がいかに重要かということです。
今回は、少し個人的なことにもなりますが、「お酒を飲む・飲まない」という身近な話題を通じて、私たち専門家が大切にすべき姿勢について考えてみたいと思います。
体質の違いを人格の問題にしてはいけない
私自身、体質的にお酒をまったく飲むことができません。これは花粉症などと同じで、あくまで生まれ持った体質です。
しかしこれまでは、「付き合いが悪い」「真面目すぎる」といった人格的な評価をされることがありましたし、会社員時代の飲み会は苦痛以外の何物でもありませんでした。
行政書士として独立した後、様々な立場の方々とお仕事をさせていただく立場から強く感じるのは、酒を飲まないくらいで文句を言われるような社会では、到底、本当に困っている人が救われることはないということです。
たとえば、花粉症で苦しんでいる方に「気合いで乗り切れ」と言うのは明らかにおかしいですよね。そうした小さな違いさえ認め合えないとしたら、身体的なご負担を抱えている方や、文化や環境が異なる方など、もっと深刻なお悩みを抱える方々に寄り添うことはとてもできません。

それぞれの心地よいコミュニケーションの形
「お酒が飲めないと仕事が広がらない」といった風潮がまだ残っているのも事実かもしれません。ですが、私が開業してからの経験では、全くそのようなことはありませんでした。
例えば、
・女性のクライアント様の場合 :お仕事のお話や付き合いでお酒の席を必要とされない(したくない)方が多いため、私が飲めないことでのデメリットは感じておりません。
・音楽ワークショップでの関わり :高校生のみなさんと一緒に取り組むワークショップでは、音楽という共通の言葉があるため世代を超えて心を通わせることができますし、そもそも未成年ですのでお酒の席は存在しません。
・地域の高齢者の方々との関わり :地域によっても違いますが、私の自治会ではお酒を強制されるようなことはなく、「昔のやり方は変えていかないとね」とおっしゃる方も増えてきています。
ある女性のフリーランスの方から、こんなお話を伺ったことがあります。お仕事の紹介でお酒の席に呼ばれた際、不快な思いをされたためきっぱりとお断りしたところ、せっかくのお仕事の話がなくなってしまったそうです。それ以来、「仕事の話ならお昼のカフェやお茶の席で十分」と決めてご自身を守っていらっしゃるとのことでした。

なぜ人は他人に酒を勧めたがるのか
心理学の視点から見ると、他人に無理にお酒を勧めてしまう背景には、「認知的不協和」という心の動きが働いていることがあると言われています。これは、自身の飲酒の習慣に対する後悔や不安を、「自分は間違っていないんだ」と無意識に正当化しようとする心理です。
本当に心からお酒を楽しんでいる方は、他人に強要したりしません。酒が好きな人同士で楽しめば、それで十分なのです。
専門家に求められる本当の資質
行政書士をはじめとする士業の専門家に求められるのは、酒席を盛り上げたり面白いことを言ったりするようなことではありません。
こうした力は、にぎやかなお酒の席よりも、むしろ静かで落ち着いた環境でこそ、しっかりと発揮できるものだと思っております。
時代の変化とチャンス
コロナ禍を経て、世の中の働き方や人間関係の作り方は大きく変わりました。オンラインでのお打ち合わせが当たり前になり、自分らしい生活のペースが尊重され、多様性への理解も少しずつ深まっています。
こうした変化は、昔ながらのお酒の文化に馴染めなかった方々にとって、ご自身の力を発揮しやすくなる大きな転機になったと感じています。

おわりに:誰もが安心して相談できる場所へ
私はここ長浜市で、地域に根ざした行政書士として活動しております。お酒は一滴も飲めませんが、それが業務に支障をきたしたことは一度もありません。むしろ、私自身がそうした経験をしてきたからこそ、さまざまなご事情や困難を抱えた方々のお気持ちに、より深く寄り添えるようになったと感じています。
本当の意味での専門家とは、表面的な付き合いではなく、目の前の問題をしっかりと解決することで信頼関係を築いていく存在です。体質や価値観の違いで排除されることのない、本当の意味で多様性を大切にできる社会に向けて、専門家の立場から少しでも貢献していきたいと考えております。
どのような背景をお持ちの方でも、「ここなら安心して話せるな」と思っていただけるような事務所を目指して、これからも日々励んでまいります。